2017年2月20日月曜日

メイドラゴン=ユグノー説(2)

 前回は第1話について考察を行いましたが、今回はその続きとして第2話について根拠を見出していきたいと思います。以下に根拠を挙げていきますが、まさか第2話でも多くの寓意が隠されていたとは思い至りませんでした。

根拠①
 トールが魚屋さんを含め商店街の人々と知らぬ間に仲良くなっているという描写があります。これは、ユグノーがその商人魂で功を奏し、移住先の商人達とのネットワーク形成を成し遂げたということを表しているのです。

根拠②
 トールが人間界にいるという噂を聞きつけて、同じ「ドラゴン」であるカンナが小林さんのところへやって来ます。そこでカンナは「小林がトールを誑かしている」と主張していました。これは根も葉も無い噂なのですが、ユグノーの移住先について評判を下げるようなデマが流れたということは実際によくありました。こうした噂はユグノーの流出を阻もうとしたフランス当局の意向を受けたものであり、移住先がどれだけ酷い場所かということを喧伝する役割を果たしていたようです。

根拠③
 カンナは「イタズラ」を働いてしまったせいで元の世界にいられなくなったと言っていましたが、ここでいう「イタズラ」とはフランス王権への何らかの反抗的行為を表しているのではないでしょうか。

根拠④
 カンナによると、元の世界でトールは「行方不明」扱いとなっていたようです。ユグノーもフォンテーヌブロー王令発布後は違法な亡命の道を選んだ者が多く、夜逃げ同然に国外へ出て行きました。何故違法なのかというと、そもそもフォンテーヌブロー王令が高位聖職者以外のユグノーの国外退去を禁止していたからです。夜逃げ同然で亡命したのですから、知り合いに行方を告げないまま故郷を去るのも無理はありません。

根拠⑤
 小林さんが「その気になれば、この世界も…」と「ドラゴン」を脅威と見る発言をしてます。これは、表向きはユグノーを歓迎しながら、一方でゼノフォビアを隠しきれなかったブランデンブルク=プロイセンの二面性と一致します。

根拠⑥
 小林さんが仕事で忙しい様子も描写されています。一領邦を統治する選帝侯なので当たり前です。

根拠⑦
 小林さんが出勤しようとした時、カンナも小林さんと一緒に「会社」へ行きたがりました。史実として、ユグノーはブランデンブルク選帝侯やプロイセン王など中央から重宝され、宮廷に進出します。「会社」を政治決定の場と捉えるならば、このカンナの態度はユグノーによる政治参加の意志を表していることになります。

 第2話はこれで終わりです。因みに今回から登場した新たな「ドラゴン」であるカンナですが、かなりの人気が出ているようですね。僕の後輩は餌付けのシーンを何十回も再生していたそうです。

<参考文献>
塚本栄美子(2002)「ブランデンブルク=プロイセンにおけるユグノー ―その受けいれをめぐって―」『岐阜聖徳学園大学紀要<教育学部編>』第41集、pp. 43-55
塚本栄美子(2011)「近世ベルリンにおける「フランス人」の記憶-第一世代シャルル・アンションの歴史書-」『佛教大学歴史学部論集』創刊号、pp. 51-68

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